心理占星学の実際

一般に心理占星学というとき、心理学的な解釈をする占星術と考えられていますが、心理療法の正式な教育とトレーニングを受けて長年の実践によって経験と技術を積んだ心理療法家の心理占星学と、聞きかじりの心理学の知識しかない占い師の心理占星学では、内容、目的、アプローチ、倫理が大きく異なります。

占い師の主観で判断が大きく左右するのが占星術をはじめとする占いの限界です。そのため占い師が心理療法家か否かでは、同じ心理学的な解釈をする占星術でも大きく異なってきます。これは占星術の問題ではなく占い師自身の問題です。

ここでは心理療法家による占星術を心理占星学と限定し、心理占星学の実践的な側面の実際について解説します。

人生における選択とそこから生じる責任は諸問題の根源であり、無責任に選択を回避して一時的に不安を解消する自己欺瞞的な態度をサルトルは「悪しき信仰」と定義しました。

人生はあらかじめ運命によって定められており、運命を信じて自分を受け入れることで不安は解消します。そのため多くのクライアントはこの「安心感」を占い師から買い求めます。

ここで商売の人間関係とカウンセリングの人間関係の差異が明確に顕れてきます。

商売の人間関係ではなんであれ顧客のニーズに応えることが最重要課題です。そのため商売で占いをしている占い師は顧客のニーズに応えるためなんとしてでも顧客の自己欺瞞をサポートする「安心感」を売らなければなりません。

しかしカウンセリングの人間関係では、顧客が買い求めているのはカウンセラーの愛情でも、同情でも、顧客の自己欺瞞を無条件に受け入れることでもありません。

カウンセリングでは生き方のアート、困難を明るみに出す技術が売買されます。

心理占星学における顧客との関係は商売の人間関係ではなく、カウンセリングの人間関係です。

欧米には心理療法家で心理占星学を研究している研究者が多くいます。実際に彼らはどのように占星術を実践的に使っているのでしょうか?

私の知っている限りでは、占星術とサイコセラピーの間に境界を設け、使い分けています。

あるものは初回の数回のセッションのみホロスコープの分析をして、本格的なサイコセラピーを始めるか否かの目安にします。

あるものは占星術の知識のある顧客にだけ占星術も使いながらセラピーを進めます。占星術とサイコセラピーを完全に使い分けて顧客を別々に分けている場合もあれば、占星術は研究材料で特に占星術の顧客は取らないセラピストも多くいます。

心理学者のユングも心理療法のツールとしてではなく、無意識の原理を発見するための資料として占星術や錬金術を研究していました。

それでは心理療法と占星術を勉強しながら単純にブレンドすれば心理占星学となるのでしょうか?

答えは否です。

心理療法と占星術の間には原理的な違いがあります。この原理的な違いを理解したうえで、心理療法家として心理学的な占星術が出来上がるまでには相当の年月が必要です。

リズ・グリーンをはじめ今日多くの心理療法家が心理占星学のプログラムを開発しています。これはセラピストになるためのプログラムではないのですが、心理療法家の視点で解釈する占星術のトレーニング・プログラムです。こうした需要の背景にあるのは、無意識的な従来の占いを意識化する啓蒙的な側面があります。そのため伝統的な占星術師との間には軋轢が生じることもあります。

一人一人のセラピストの経験・技術・哲学が異なるように、心理占星学もセラピストにより百人百様です。「星の数ほど」存在するといっても過言ではありません。